文章を書いてもらうとか、画像を作ってもらうとか、そういう話ではありません。
とうとう、商品責任者に任命してしまいました。
しかも、全権限を与えました。
我ながら、ずいぶん思い切ったことをしたと思います。
売れていないのに、仕事だけ増えていく。
SUMIRE JAPAN DESIGNという名前で、海外向けに日本のデジタルデザインを販売しています。
Etsyという海外のマーケットプレイスです。
始めたばかりで、まだ売上らしい売上はありません。
それなのに、やりたいことは次々と出てきます。
最初は平安時代の文化をモチーフにした和柄でした。
紫を基調にしたデザインを作り、藤の花や桜を加え、商品として登録する。
それだけでも結構な作業です。
ところが、作っているうちに考え始めました。
そもそも、海外の人は日本の平安文化をどう見ているのだろう。
京都といえば、日本人ならさまざまな時代の文化が思い浮かびます。
平安時代もあれば、室町時代もある。
金閣寺も銀閣寺も室町文化です。
でも、海外の人がそこまで時代を区別して日本のデザインを探しているのか。
分かりません。
というより、最初はそこまで考えずに商品を作っていました。
売りたいのは、歴史ではなかった。
考えているうちに、自分が何に惹かれているのか、少しはっきりしてきました。
十二単です。
あの鮮やかな色彩。
紅、紫、緑、黄。
何枚もの衣を重ねることで生まれる、独特の美しさ。
私は別に、海外の人に平安時代の歴史を教えたいわけではありません。
あの色の組み合わせを、現代のデザインとして楽しんでもらえたら面白い。
そう考えました。
そこで思いついたのが、十二単の色彩をモチーフにした120パターンのデザイン素材集です。
しかも、完成した柄を並べるだけではありません。
PNGの素材を自由に重ねて、自分だけのデザインを作れるようにする。
これは面白いのではないか。
少なくとも、私は面白いと思いました。
問題は、誰が作るのかです。
では、あなたが責任者です。
そこでAIに言いました。
この商品の責任者を任せます。
海外の人に売れるように、商品企画から制作まで、あなたの判断で進めてください。
全権限を与えます。
普通の会社なら、ずいぶん乱暴な人事です。
面接もしていません。
履歴書も見ていません。
給料の交渉すらありません。
もっとも、毎月利用料は払っていますが。
すると、AIは商品構成を考え、色彩テーマを決め、120種類のパターンと60種類の組み合わせ素材を制作しました。
英語の説明書や販売用の画像、商品説明文まで用意してきました。
なかなか大したものです。
ただし、ここで勘違いしてはいけません。
商品ができたことと、商品が売れることは、まったく別の話です。
そして、AIが「完成しました」と言ったからといって、本当に販売に耐える商品なのかは、人間が確認しなければなりません。
以前、AIはあと一歩のところで仕事にならない、と書いたことがあります。
今でも、その考えは変わっていません。
でも、その一歩をどう埋めるか。
最近は、そこを試している気がします。
全権限を与えても、責任は残る。
AIに任せれば、自分は何もしなくてよくなる。
そんなことはありません。
何を作りたいのか。
なぜそれを作るのか。
誰に使ってもらいたいのか。
そして、出来上がったものが本当に良いものなのか。
結局、考えなければならないことは残ります。
むしろ、制作の速度が上がった分、判断することが増えました。
広告の仕事を30年やってきましたが、こんな形で商品開発をするとは思っていませんでした。
しかも、相手は海外のお客さんです。
こちらが美しいと思ったものを、同じように美しいと思ってくれる保証はありません。
まだ分からないことだらけです。
さて、誰が買ってくれるのだろう。
商品を作ることは、以前よりずっと簡単になりました。
少なくとも、一人でできることは格段に増えています。
でも、商品を買ってもらうことまで簡単になったわけではありません。
そこが面白いところです。
AIが商品を作る。
私は、それをどう売るか考える。
いや、どう売るかもAIと一緒に考えている。
では、私は何をしているのだろう。
そんなことを考えると、少しおかしくなります。
ただ、一つだけ確かなことがあります。
誰かが買ってくれたら、たぶん私が一番喜ぶ。
商品責任者のAIも喜んでくれるのでしょうか。
そのあたりは、まだよく分かりません。
まずは一つ、売れてほしいものです。
