普通のポスティングではありません。
タワーマンションです。
調べてみると、これがなかなか難しい。
セキュリティが厳しかったり、そもそもチラシを入れられなかったり。
新聞折込の方がいいのか。
別の方法はないのか。
いろいろ調べているうちに、タワーマンションへのポスティングを扱っている会社を見つけました。
これは一度、聞いてみよう。
問い合わせをしました。
すると返信が来ました。
「広告代理店の方ですか?」
少し考えました。
昨年までだったら、普通に「はい」と答えていたと思います。
でも今は違います。
なので、
「いいえ。個人で広告サービス業をしています」
と返信しました。
すると、
法人でなければ取引できません。
という返事が来ました。
なるほど。
そうなんだ。
前払いでも駄目ですか。
前払いなら、問題はないと思った。
最初は、与信の問題なのかなと思いました。
会社同士の取引なら請求書を発行して、翌月末に振り込む。
個人事業主だと、そのあたりの信用の問題があるのかもしれない。
それなら簡単です。
「取引が成立したら、前払いします」
と伝えました。
これなら相手に金銭的なリスクはないはずです。
でも、駄目でした。
法人でなければ取引できない。
そういうルールなのだそうです。
もちろん、会社には会社の決まりがあります。
こちらが「前払いするからいいでしょう」と言ったからといって、相手がルールを変える必要はありません。
それは分かります。
でも、ちょっと面白いなと思いました。
昨年まで、私は向こう側にいた。
私は広告会社で30年以上仕事をしてきました。
媒体社や制作会社、印刷会社。いろいろな会社と取引してきました。
その頃は、
「法人であること」
について考えたことなんて、ほとんどありませんでした。
会社名を名乗る。
名刺を出す。
見積書をもらう。
発注する。
請求書が来る。
振り込む。
それが普通でした。
ところが独立して個人事業主になった途端、今まで見えなかったものが見えるようになりました。
法人じゃないと取引できません。
なるほど。
こちら側には、こういう壁があったんですね。
信用って、何だろう。
今回、少し考えたのは「信用」についてです。
法人なら信用がある。
個人事業主だと信用がない。
もちろん、そんな単純な話ではないと思います。
今回の会社も、私個人を信用していないという話ではなく、社内の取引ルールとして法人に限定しているのでしょう。
でも、
「前払いします」
と言っても取引できないというのは、ちょっと不思議でした。
お金を払えるかどうかではない。
実績があるかどうかでもない。
広告の仕事を何年やっているかでもない。
法人か、法人ではないか。
そこで線が引かれる。
広告業界に長くいましたが、自分が個人事業主にならなければ、たぶん気づかなかったことです。
独立すると、景色が変わる。
独立してから、こういうことが時々あります。
会社員だった頃には何でもなかったことが、急に難しくなる。
逆に、会社にいた頃には面倒だったことが、一人ならすぐ決められることもある。
良いこともあります。
不便なこともあります。
どちらが正しいという話ではありません。
ただ、立場が変わると、同じ広告業界でも景色が変わります。
去年まで普通に通っていた道に、今年になったら突然、小さな柵が置いてある。
そんな感じです。
まだ、こういう慣習はあるんですね。
仕事としては、別の道を探せばいい。
今回のタワーマンションへのポスティングについては、別の方法を探せばいいだけです。
新聞折込もある。
別のポスティング会社もあるかもしれない。
そもそも違う媒体の方がいいかもしれない。
なので、仕事としてはそれほど困っていません。
媒体を使うことが目的ではありません。
届けたい人に、どうすれば届くのか。
それを考えて、別の道を探せばいい。
ただ、
「広告代理店の方ですか?」
と聞かれて、
「個人で広告サービス業をしています」
と答えた途端に、取引できなくなった。
それが妙に印象に残りました。
54歳で、また知らないことに出会った。
30年以上広告業界にいて、
54歳で独立して、
また知らないことに出会いました。
前払いします。それでも、法人じゃないと駄目ですか。
駄目なんですね。
まだ、こういう慣習もあるんだなあ。
そんなことを思った一日でした。
