当時の施設を見て、旧百貨店型の縦動線は回遊が面倒だと書いています。
エレベーターには行列ができていた。
裏手にもエレベーターがあるので、そちらを使うほうがいい。
そんな短い記録です。
今読むと、施設の評価よりも気になることがあります。
私は、上の階へ行くという小さな手間を見ていたのです。
来てもらった後にも、移動がある。
商業施設の販促というと、まず集客を考えます。
どんな広告を出すか。
どんなイベントを行うか。
どうすれば、施設まで来てもらえるか。
もちろん、それは大切です。
でも、お客様の行動は入口で終わりません。
目的の店が上の階にあれば、そこまで移動する。
エレベーターを待つ。
エスカレーターを探す。
案内表示を見る。
施設へ来てもらった後にも、いくつもの小さな判断があります。
2009年の私は、その途中にある行列が気になっていました。
効率がいいことと、使いやすいことは同じではない。
当時の記事には、縦のほうが本当は効率がいい、と書いています。
ただ、そのすぐ後に、回遊が面倒で、エレベーターには行列ができているとも書いている。
少し矛盾しているように見えます。
でも、たぶん現場では、こういうことがよくあります。
図面の上では短い。
距離としては近い。
設備も用意されている。
それでも、実際に使う人にとっては面倒なことがある。
待つ時間がある。
どこへ行けばいいのか迷う。
混んでいる場所を避けたい。
設計上の効率と、お客様が感じる負担は、必ずしも同じではありません。
空いているエレベーターは、知られなければ使われない。
記事には、裏手にもエレベーターがあると書いています。
それを知っている人は、行列を避けられたのでしょう。
では、初めて来た人はどうだったのか。
その案内がどこにあり、どのくらい分かりやすかったのか。
当時の記事には、そこまでの記録はありません。
だから、実際にどれだけの人が困っていたかは分かりません。
ただ、使える設備があっても、見つけてもらえなければ選択肢にはならない。
これは広告にも似ています。
良い店がある。
便利な入口がある。
空いている経路がある。
でも、存在を知らなければ使えません。
案内表示も館内マップも、ただ置けば終わりではないのだと思います。
行列をなくせなくても、迷いは減らせるかもしれない。
販促の仕事で、エレベーターそのものを増やすことはできません。
混雑を完全になくすことも難しい。
でも、できることが何もないわけではありません。
別の経路を分かりやすく伝える。
目的の店までの行き方を、入口から途切れずに示す。
混みやすい場所で、次の行動が分かるようにする。
お客様が迷う場面を見つけ、その迷いを一つずつ減らす。
派手な仕事ではありません。
広告のように、たくさんの人の目に触れるものでもない。
それでも、せっかく来てくれた人が目的地へ着けなければ、施設の魅力は伝わりません。
人を呼ぶことと、来た人をきちんと案内すること。
どちらも来店設計の一部です。
30年以上たっても、現場で見るものは小さい。
商業施設や店舗の販促に、30年以上関わってきました。
大きな企画を考えることもあります。
広告の予算や媒体を考えることもあります。
でも、現場で気になるのは、意外と小さなことです。
人がどこで立ち止まるのか。
どこで列ができるのか。
どの案内の前で迷うのか。
目的の場所へ、ちゃんとたどり着けるのか。
2009年の私は、エレベーターの行列を見ていました。
今なら、もっと丁寧に人の動きを見たいと思います。
行列がある、で終わらせず、なぜそこに集中するのかを考える。
別の経路は見つけられているのか。
案内は、お客様の立つ場所から見えているのか。
広告で人を呼ぶ前に。
そして、人を呼んだ後にも。
考えることは、まだたくさんあります。
