目的は単純です。
宇都宮へ行って、餃子を食べる。
せっかくなので一軒だけではなく、何軒か食べ比べてみようということになりました。
実際に「めんめん」「健太餃子」「みんみん」「香蘭」と回り、気がつけば4軒。
完全に餃子ツアーです。
その途中で、少し面白いことに気がつきました。
同じ餃子が食べられるのに、なぜ本店へ行くのか。
宇都宮みんみんには、JR宇都宮駅周辺にも店舗があります。
実際に見てみると、駅周辺の店舗は比較的入りやすそうでした。
ところが、本店へ行ってみると大変な混雑。
案内された待ち時間は、約2時間。
普通に考えれば、
「駅の店で食べればいいじゃないか」
となります。
同じ「みんみん」の餃子です。
しかも私たちは、餃子を食べるために宇都宮まで来ています。
だったら、空いている駅の店舗で食べれば目的は達成できる。
でも、そうならなかった。
「せっかく宇都宮まで来たんだから、本店で食べたい」
と思ったのです。
結局、順番を待つ間に別の餃子店へ行き、二荒山神社を歩き、それでも再び本店へ戻って餃子を食べました。
自分でやっておいてなんですが、合理的とは言いにくい行動です。
そこで考えました。
私たちは、本当に「餃子」だけを食べに行ったのだろうか。
「食べる価値」と「そこへ食べに行く価値」は違う。
もし目的が「みんみんの餃子を食べること」だけなら、駅の店舗で十分だったはずです。
それでも本店へ行った。
そこには、
「宇都宮まで来た」
「餃子通りまで歩いた」
「本店に行った」
「2時間待ちだった」
「それでも食べた」
という一連の体験があります。
そして不思議なことに、この「わざわざ」があるから、人に話したくなる。
「宇都宮駅でみんみんの餃子を食べた」
より、
「みんみん本店、2時間待ちだったよ。それで待っている間に別の餃子屋にも行って、最後に戻って食べた」
の方が圧倒的に話になります。
味の話だけではありません。
そこへ行ったこと自体が、体験になっている。
これが実店舗の持つ、とても大きな価値なのではないかと思います。
行列まで「物語」になる。
もちろん、行列は基本的にはお客様にとって負担です。
待たせれば店の価値が上がる、という話ではありません。
ただ、今回自分自身が体験してみて感じたのは、
「待ったのに食べた」と「待ってまで食べた」は、同じ事実でも意味が違う
ということです。
2時間という待ち時間があった。
だから諦めるのではなく、
「じゃあ、その間に別の餃子屋へ行こう」
となった。
そして最後には、
「2時間待ってでも本店へ行った」
という話が残りました。
距離、交通費、待ち時間。
普通ならすべて来店の障壁です。
ところが、それを超えるだけの理由が存在すると、場合によってはその「わざわざ」まで体験の一部になっていく。
これは非常に面白い現象です。
さらにすごかったのが「餃子通り」。
そして今回、もう一つ印象的だったのが宇都宮の「餃子通り」でした。
みんみん本店だけが混んでいるわけではありません。
私たちが訪れた日は、近くの「悟空」にも大変な行列ができていました。
そこで気づきます。
これはもう、一店舗だけの力ではない。
「餃子通りへ行くこと」そのものが体験になっている。
店が並び、人が並び、餃子を食べ歩き、写真を撮る。
本来なら隣の餃子店は競合です。
ところが、隣の店にも行列ができていることで、
「やっぱりここは宇都宮餃子の場所なんだ」
という価値が、むしろ強くなっているように感じました。
商品としての餃子。
店舗としてのみんみん本店。
そして場所としての餃子通り。
商品理由 → 店舗理由 → 場所・体験理由。
理由が積み重なるほど、「わざわざ行きたい」が強くなるのかもしれません。
そこへ行くには、理由がある。
今回の宇都宮で、私の中で一つの言葉が生まれました。
「そこへ行くには、理由がある。」
これは飲食店だけの話ではありません。
美容室でも、物販店でも、ショールームでも、ワークスペースでも同じです。
たとえばワークスペースなら、
「Wi-Fiがあります」
「個室があります」
「モニターがあります」
だけでは、それは設備の説明です。
お客様が知りたいのは、
「なぜ家ではなく、わざわざそこへ行くのか」
なのではないでしょうか。
「家では集中できない」
「カフェを探す時間がもったいない」
「帰宅してから仕事を始めたくない」
だから、
駅を降りてすぐの場所で、集中して終わらせてから帰る。
そうなれば「駅徒歩1分」という物件情報が、
時間を無駄にしないための場所
という来店理由に変わります。
設備そのものではなく、その場所へ行くことで何が得られるのか。
ここを考えることが重要なのだと思います。
「良い店」だけでは、人は動かない。
味がいい。
商品がいい。
接客がいい。
設備がいい。
もちろん、どれも大切です。
でも、それだけで人が来るとは限りません。
そもそも存在を知らなければ来られない。
知っていても、「自分には関係ない」と思えば来ない。
そして理解しても、
「なぜ、わざわざそこへ行くのか」
という理由がなければ、人はなかなか動かない。
だから実店舗の集客は、
見つけてもらう。
知ってもらう。
理解してもらう。
来店意向を高める。
来店してもらう。
口コミ・再訪につなげる。
ここまでを一つにつなげて考える必要があります。
さらに来店後、期待した体験ができれば、
「行ってきた」
「こんな店だった」
「わざわざ行った甲斐があった」
と誰かに話したくなる。
その何気ない会話や口コミが、今度は別の誰かの
「そこへ行く理由」
になる。
つまり、来店で終わりではありません。
見つけてもらう
→ 知ってもらう
→ 理解してもらう
→ 来店意向を高める
→ 来店してもらう
→ 口コミ・再訪につなげる。
その口コミや語りが、次の人に見つけてもらう入口となり、また新しい来店理由が生まれます。
この循環をつくること。
来店設計室が考えたいこと。
Google広告、Instagram、Googleマップ、Webサイト、写真、動画、チラシ、店頭。
これらはすべて大切です。
でも、これらは目的ではありません。
人が動くための手段です。
だから、t-styleの「来店設計室 powered by t-style」が最初に考えたいのは、
「この店に、人がわざわざ足を運ぶ理由は何だろう?」
ということです。
すでに理由があるのなら、それを見つける。
まだ伝わっていないのなら、言葉にする。
もっと強くできるのなら、磨く。
そして、その理由をGoogle、SNS、Web、広告、店頭など必要な手段を組み合わせて伝え、実際の来店につなげていく。
私は広告・販促の仕事を長くしてきましたが、結局やりたいことは、そこなのだと思います。
広告を出すことではありません。
SNSを更新することでもありません。
人が「行ってみよう」と思い、実際に動くところまでをつくること。
宇都宮へ餃子を食べに行った一日から、そんなことを改めて考えました。
